個人情報の保護に関する法律に抵触する可能性がある武雄市長の構想

 
 続きです。
 
 個人情報保護法では個人情報を次のように定義しています。第二条を引用します。


第二条  この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
(2〜5省略)
6  この法律において個人情報について「本人」とは、個人情報によって識別される特定の個人をいう。
 常識的に読みましょう。個人情報とは,まず生きている人に関する情報です。その人の趣味や嗜好,性癖だって生きている人のことなら個人情報の大きなくくりに入ります。が,それだけでは不十分で,それらさまざまな情報のうち,「氏名」「生年月日」などの例(限定しているわけではないことに注意)にあるように,特定の個人を識別できるもの,または,複数の情報と簡単に名寄せできるものをいう,とあります。
 
 図書カードをTポイントカードに置き換えると,Tポイントカードの番号は個人情報に該当します。これを管理するのはCCCです。また,規約上,カードの利用履歴をマーケティングに使うことを謳っていることは先のエントリで述べました。
 つまり,Tポイントカードを図書カードにすると,読書履歴が個人情報になるのです。
 
 武雄市の条例によれば事業計画書の提出がなければ市長が指定管理者候補を指定できないはずなので,このあたりの問題については理解しているはずです。
 
 さて,個人情報と読書履歴が紐付くということはどうなるでしょうか。同法第五条にこうあります。

第五条  地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その地方公共団体の区域の特性に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
 責務を有する。つまり義務化されているのです。じゃあどうなるかというと,武雄氏個人情報保護条例の目的,第一条で

第1条 この条例は、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることにより、個人の権利利益を保護し、もって基本的人権の擁護と公正で信頼される市政の実現を図ることを目的とする。
 および第三条で

第3条 実施機関は、この条例の目的を達成するため、個人情報の保護に関し必要な措置を講じなければならない。
2 実施機関の職員は、職務上知り得た個人情報を漏らし、又は不当な目的に使用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。
 とあります。
 
 このように,Tポイントカードは個人情報と紐付き,利用履歴と共にCCCに蓄積され,マーケティングに利用されますが,これは第三条の用件を満たすのでしょうか。
 
 加えて第七条にこうあります。

第7条 実施機関は、次に掲げる事項に関する個人情報を収集してはならない。
(1) 思想、信条及び宗教に関する事項
 貸し出し履歴を分析することは思想信条や宗教に関する事項に触れる可能性が高く,かつ,Tポイントカードを図書カードとしていれば確実に個人が特定できるため,貸し出し履歴が個人情報を構成することは先に述べました。
 
 武雄市長のTポイントカード導入は,同市の条例にも,個人情報保護法にも抵触する危険性が高いといえるでしょう。