ウチとソト

 
 昨今の?スマートフォンまわりでの個人情報,いや個人に関する情報の取り扱いのザルさにはちょっと目に余るものがあると思うわけさね。
 遡ればカレログ,AppLogやAppTV,マガストアもそう。これらに共通していると思うのは,やっちゃった側の「ウチ」と「ソト」の区別の甘さ。
 ウチとソト,言い換えれば「それは預かっているものなのか,もらったものなのか」の区別。あるいは「オレのもの」と「オマエのもの」の区別。知覚していないジャイアニズム。オレとオマエの区別。
 
 個人に関する情報,たとえば行動履歴や使っている端末の識別情報,入っているアプリのリストに雑誌の閲覧情報,これぜんぶ,日常に置き換えてみればよくわかる。
 行動履歴ならこう。「お前,こないだ本屋で見かけたぞ,漫画ばっか読んでんだろ」とツレに言われるくらいならまあアリです。が。そのツレが本屋だけでなく商店街中を見張っていて,誰がいつどこで何をしたか調べて各店主にそのデータを売っていたら,まあ,問題になりますわな。
 その言い訳が「田中さんの好みに合う広告をお届けするためです!ヽ(`д´)ノ」だったら殴りたくもなろう。
 使っている端末なら,なんでもいい。普段使っている文具でもパソコンの機種でも服のブランドでも逐一調べ上げられて,広告のネタにされたらイヤなもんだろう。
 入っているアプリのリストは本棚に例えるといい。勝手に部屋の本棚を漁られ,町中でリストアップされて「あなたにはょぅι゙ょ陵辱モノがおすすめ!」とかやられるわけだ。言っておくけど俺は違うからな。ひんぬーは好きだが。
 
 もとい。
 
 これらの行為を一言で言うなら,ストーキングだよな。
 それを平気でやってしまえるのは,なんでだろう。
 
 俺はそこに,「ウチ」「ソト」の区別のあいまいさを見たわけさね。
 
 つまり,「ウチ」ってのは自分が責任を持つ範囲。俺の家の中の本棚であったり,俺のパソコンの選び方であったり。「ソト」ってのは,少なくとも親しくはない人たちのそれら。気軽に家に呼べるかどうかくらいが線引きかなあ,俺の場合。
 ところがカレログだのなんだのはそこの区別がついてない。目に見える範囲を全部「ウチ」として扱ってしまった。だから,「ソト」に考慮が及ばない。
 「ソト」のものは「ソト」のものだから,そのまま扱ってはいけない。「ウチ」に引き込むときは,「ソト」のものから「ウチ」のものにラベルを張り替えなくちゃいけない。
 それは書店の書棚の本を購入するようなことだったり,ツレと来週の飲み会を約束するようなことだったり,つまりは「ソト」が了解する,という手続きが必要だということ。
 それを,「ウチ」のものだと思い違いをしてしまうから,手続きを端折る。
 
 で,燃え上がる。
 
 ログはたしかにサーバに溜まる。でもそれは「ウチ」のものじゃない。「ソト」の痕跡にすぎない。たまたま識別できるだけの詳細な情報があったとしても,それを使うときは「ソト」の了解を得る手続きが要る。
 勝手に「ソト」の情報を取ろうなんてのは,覗きと同じだ。
 
 今はまだ処罰する法がないのかもしれないけど,不正指令電磁的記録の作成や共用が使えるのかもしれないけど,まあそこんとこは正確にはわからんけど,
 
 やっちゃいかんだろ,ってことはわかる。
 
 それがわからんから,簡単に個人に関する情報を荒っぽく扱ってしまう。
 
 できることとやっていいことの区別もつけられない。
 
 もっとこうさあ,オレとオマエの区別をつけようぜ。