もしも,たりきが岡崎図書館事件における librahack 氏の立ち位置だったら

 
 まず捕まりますな。苦笑。
 
 私がクローラ作るとしたら,たぶん間違いなく一連の動作で一発格納とかせずに,まず csv とかにデータを落とし込むような作りにすると思います。とりあえずデータだけ取っておくみたいな感じ。
 で,Perl とかでスクリプト書くかな。当時の岡崎図書館では「TosCode」(図書コード?)をプライマリキーにしているらしくて,URL 引数になっていた。ので,連番と仮定してガーーーーっと順番に一個ずつ GET リクエスト投げるw 並列では投げないと思います。作るの面倒だから。
 クローラとしてはすごく行儀の悪いことをすると思いますw
 
 だってそれくらいで落ちるとか予想しないもん。
 
 たぶん速攻で落ちることになったと思います。で,レスポンスコード500連発を目撃するでしょう。
 でも500だと落ちた原因はわかりません。HTTP レスポンスコード500ってのは,「サーバーの内部エラー」ということしかわかりません。リクエスト投げたよ,サーバの中でエラーが出たよ。それだけしかわからないのですから,対処に困ります。
 503 なら「サービス利用不可」で,原因は過負荷やメンテナンス等,ということで,過負荷を疑えるのでウエイト入れるかどうか検討できます。
 
 まあ,そうなったら,とりあえず何も考えず何の根拠も無くウエイト入れてみるでしょう。途中までうまく取れていたのですから。
 でもその日は(実は見えないところで)サーバダウンを起こしていたので,もうデータは取れないと思います。で,翌日以降。またガーーーーっとまわして,前日よりは取れたところでやっぱりまたエラー連発,とかになるでしょう。
 
 私のほうが「悪質」に見えるでしょうね。librahack 氏のように負荷の予測とかしないでふつうにガンガンリクエストするでしょうから。
 
 で,さっくり逮捕される,と。
 で,愛知県警にコッテリ絞られて自白調書書かされる,と。
 
 
 誰がやっても似たような目に遭ったであろうことは想像に難くありません。
 だからこそ,こんなんで被害届出すなや(というかこんなショボいの表に出すなや)という感覚だけでなく,警察はこんな程度で立件すんなや,という思いがあるのです。
 
 librahack 氏はまさか自分のクローラで Libra のバックヤードがコケてるとは思いもしなかったでしょう。私が同じ立場でも,そんなの想像しないと思います。
 仮にログを取っておいたとしても,です。
 
 ふつうこんなんで落ちるとは思わんもん。
 
 
 それでもサーバ落ちた事実をもとに民事責任負わされる可能性は否定できません。でも,これは刑事責任ないでしょう。落とすつもりもなければ,落ちてるとも思わないんですから。
 なのに,なんで立件されたんや。そこんとこを問題視してるわけですな。
 

 高木先生の記事を読んで

 
 「岡崎図書館事件について その1」http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20100710.html#p01
 
 気になったのはここ。


私:記者に対する発表で、肝心なポイントである確かに業務妨害でやっていると思われるポイント、そこをしっかり付けた上で今回発表されたのでしょうか。記者がそこを抜かして書いちゃったのであれば、報道の責任でしょうけども。記者に伝えるにあたってそのポイントを発表されたのですか。

警:同じ組織内で恐縮ですが私は一捜査員でして、発表は警察の上層部が検討の上マスコミ発表しているものですから、こういった意見が多々ありますよと、実は高木さんだけじゃないのですねお電話頂いているのは。組織の上層部に上げまして今後検討していかなければいけないのかなと思います。ただ、捜査自体は、故意という部分は認められるという情報を持っておりますので、それはそれで進めていきますけども。報道の発表のし方について産業の今後の発展が阻害される、萎縮するのではないかという、不安感を煽っているという方がたくさんみえるということは上層部に伝えたいと思います。

 警官側の答えで「捜査自体は、故意という部分は認められるという情報を持っております」とのこと。これが一体なんだったのか気になる。どんなもので「故意」を認定したのだろうか。
 高木先生の記事を見るまで「故意」の認定はふつうに考えて困難だと思っていた。でも故意を認められるという情報を持っていた,という。それはなんだろう。
 
 あともう一つ,これは知らなかったこと。
 注釈にある,

業務妨害罪は目的犯ではないという意味で、業務妨害の意図がなくても業務妨害罪にあたる場合があるらしい。
 という部分。これは bakera 氏が Twitter 上で補足していた
http://twitter.com/bakera/statuses/18318317508

業務妨害の意図がなくても業務妨害罪にあたる」というのは、たとえば「注目を集めたい」という動機で「●●小学校を爆破します」と書き込んだようなケースが典型ですね。業務を妨害したかったという動機ではなくても、これは業務妨害になりえるということで。
 で納得。しかし,本件においては「爆破予告をしたら警察が動いて小学校の業務に影響が出る」等の一般常識水準での影響予見ができるものではなく,ふつうこの程度では落ちないと思うのが一般的だよね,という水準で,私の「偽計業務妨害での逮捕・立件はおかしいだろ」という見解はとりあえず変更ナシでいきたいと思います。
 

 岡崎市立中央図書館事件の時系列の俺用まとめ

 
 サーバ管理者日記 岡崎市立中央図書館に電話してみた
 http://www.nantoka.com/~kei/diary/?20100622S1
 
 Librahack
 http://librahack.jp/
 
 あたりを参考に時系列をまとめてみた。
 あくまでも,取材した方のメモをもとに二次的にまとめているだけで,私が取材したわけではないこと,メモ経由なのでこれが全て事実をそのまま表しているとは限らないことにご注意ください。
 また,自分がわかりやすいように多少の編集や情報の追加,削除を行っています。オリジナルのメモはそれぞれ一次情報のあるサイト様を参照してください。
 
 まず,事件の発覚。被害届の提出まで。
 
 1.サーバが不調になる(librahack 氏のクロールによるもの?)
 2.管理会社(MDIS)の調査により,サーバダウンの原因が判明(管理会社が図書館に攻撃だと説明?)
 3.警察に相談しにいく
 4.警察で促されて被害届を作成
 
 という流れがわかります。
 警察に相談しに行ったところ被害届を出すように促された流れは,高木先生の取材によります。
 http://bit.ly/a9MmjZhttp://bit.ly/8YUuCU
 
 刑事訴訟法によれば図書館などの公的機関が犯罪を予見した場合(この場合,サーバへの攻撃),通報の義務があります*1。警察側はこの定めに従って図書館側に被害届の提出を促した可能性があります*2
 
 その後,捜査がはじまります。落合先生が次のように指摘しています。


田舎では、公的機関が被害が出た、迷惑したと騒ぐと、一般の人なら放置する警察が迅速に動く傾向があり、(後略)
 
 逮捕は5月25日でした。
 
 5.警察が捜査を行う(図書館には2,3回の問い合わせのみ/令状を持って捜査はナシ)
 6.librahack 氏を逮捕(5月25日)
 7.新聞各社による報道(実名報道?)
 8.20日間の勾留・取り調べ
 9.送検・起訴猶予処分(起訴猶予処分でも嫌疑を認めたとは限らないことに注意/落合弁護士の指摘)
 10.librahack 氏 釈放
 
 また,図書館は逮捕を報道で知ったとのことです。
 
 大きな流れとしては,
 図書館がサーバの不調に気付く → 管理会社に相談 → 管理会社が「攻撃だ」と回答 → 図書館が警察に相談 → 促されて図書館が被害届を提出 → 捜査 → 逮捕 → 20日間の勾留 → 送検 → 起訴猶予処分 → 釈放
 って感じですね。ポイントを赤くしました。
 
 関係各所の考え方についてはまた別途まとめなおします。
 
 その他参考サイト
 
 [ bROOM.LOG! ]岡崎市立中央図書館事件 #librahack について愛知県警に電話して聞いてみた
 http://blog.rocaz.net/2010/06/945.html
 
 [ bROOM.LOG! ]とある件 #librahack に関連しつつ一般論を再度電話して聞いてみた
 http://blog.rocaz.net/2010/07/951.html
 
 弁護士 落合洋司東京弁護士会)の「日々是好日」 - [刑事事件]図書館Webサイトへのクローラを実行して逮捕された男性、不起訴に
 http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100622#1277165981
 
 スラッシュドットJP - 図書館Webサイトへのクローラを実行して逮捕された男性、不起訴に
 http://slashdot.jp/security/10/06/21/118216.shtml
 
 最速転職研究会 - 法と技術とクローラと私
 http://d.hatena.ne.jp/mala/20100707/1278514965
 

*1:刑事訴訟法239の2

*2:あくまでもたりきの予測ですが。