意外と思うかもしれませんが。

 
 韓国風や中国風など、いわゆる大陸風の味付けは塩が減らせるんですよ。自分でもびっくりですが。
 辛味に唐辛子や各種スパイスが使えるから、塩は少なめでも充分だったりするわけです。韓国風なら一味唐辛子を効かせて、中華風なら海鮮系のダシを加えて胡椒を効かせるとなんだかそんな風味のような気がするから不思議。
 インド系ならガラムマサラとカレー粉。さらに西に向かってオリエンタルな地方を超えて地中海を望む風味になると、バジルやオレガノなどハーブが効いてきます。ダシは海鮮ではなくトマトが中心になるかな。
 和風のダシだと、カツヲ・コンブ・いりこ。中華風だとホタテ、エビ。オリエンタルになるとダシではなく魚醤の方面にいって、ヨーロッパが見えてくるとブイヨンやコンソメなど動物質のものになる様子。
 こうしてみると面白いっすよ。極東では海のものが味のベースになってたのが、シルクロードを西に進むにつれて陸上のものになっていく。海のものが川のものになって、野菜などの平地モノから動物質の山のものになっていく。ナントカ風、って試してみて気付いたんだけど、土地柄と味って結びつきが強いんだろうね。
 
 閑話休題
 
 和食は他の地方に比べてダシを重視します。さらに、ダシの旨味を引き出すために塩が味付けに重要な役割を果たしています。和食の「さしすせそ」、つまり「砂糖」「塩」「酢」「醤油」「味噌」のうち、「塩」「醤油」「味噌」に塩が深く関係しています。「塩」はズバリそのものですが、醤油や味噌にも塩は欠かせない原材料です。どちらも大豆の旨味を塩が引き出したものと言えますし。
 
 逆にいえば、高血圧でナトリウムを制限しなければならなくなったそのとき、「塩」「醤油」「味噌」が使えないのです。さしすせその五つの要素のうち三つが使えないので、大部分の和食は作れません。
 
 そんなとき、悪く言えばダシを重要視していない、よく言えばダシに頼らない調理法が救いになります。それが、大陸以西の調理法なんです。
 韓国の唐辛子系の調味は、秀吉の朝征で「塩の代替品」とされたことが始まりと言われながらも以降は独自に進化を遂げたおかげで海鮮の旨味を充分に引き出せる技法を確立しています。
 中国に入って南西部、さらにスパイスが効いてくると肉も美味しく頂けます。ダシには牛や豚、鳥が使われるようになり、ややコッテリした風味をスパイスが見事に昇華してくれます。もちろん野菜との組み合わせもバッチリなので、里のものを頂くにはこのあたりの味付けを狙うとよいでしょう。
 さらに西、インドからバングラディシュなどスパイスの本場へ目を向けると、私の大好きなカリーの世界が開けます。カレーといえば辛い・・だけではありませんよ。スパイスいじりだすとカレーの奥深さに驚きます。日本の鍋料理の奥深さと同じように、カレーも深いのです。海のもの、里のもの、山のもの全てをスパイスが包んでくれます。
 さらに地中海沿岸に目が届く頃には、スパイスから少し離れながらハーブが近づいてきます。ダシによる足元のしっかりした味付けやスパイスによる刺激的な味付けから変化して、小麦を中心とした里の作物と野菜、果物をメインに山のものを食する世界が広がります。そこでは味付けではなく香り付けが重要視され、ハーブは舌の上だけでなく鼻腔の奥まで刺激します。
 イタリアあたりのハーブとワインとトマトの世界を越えると、小麦粉ベースの「ソース」の世界。おいらはこのあたりになるとせいぜいシチューかハッシュドビーフくらいしか手が出ませんが、ソース系の最高到達点はフランス料理だという認識は一般的でしょう。
 
 こうしてみると、塩が使えなくてもいろんな味付けが楽しめることがわかります。
 今日は韓国風、明日はイタリア風。あまりもので中華風にして、たまにはカレーも食べたいな、いやいや少し毛色を変えてトマトとワインでブラウンソースを伸ばしてタマネギとビーフを煮込んでみようか。そんなふうに晩御飯を楽しむときに、「塩ヌキ」は意外とほどよいハンデなのかもしれません。
 
 某エヴァンゲリオンの最後のほう。「キミに不自由をあげよう」と、地平線が引かれてシンジ君は自由を一つ失いました。そのかわりに、彼は地上を歩くことで移動する目安を得ていたのです。
 おいらは「塩ヌキ」のハンデを得たことで、実はいろんな調理法を試す楽しみを得たのかもしれません。
 
 
 つうか晩飯でいろいろ試すのが楽しくなってるんだもん(笑
 今までは単に手抜きしようとしてたけど、今は手だけじゃなく塩も抜いてるからなwwww
 
 意外とオモシロいから、たまにはそういうハンデ戦もやってみるといいかもしれない。塩ヌキはまあ高血圧の人向けなんで、普通の人は、たとえば

  • 砂糖ヌキ
  • 出汁*1ヌキ
  • 醤油ヌキ
  • 味噌ヌキ
  • 小麦粉ヌキ
  • 肉ヌキ

 なんてのを試してみると楽しいかも。ニンジン食べられない子供にニンジンをどうやって誤魔化すか、ってのも、楽しめればなんてことないよ。
 同じように、ハンデ戦も楽しんでみよう。たまにはいつものレシピで一個だけ抜いてみて、それをどうやってフォローするかチャレンジしてみると、これがまた楽しいから。
 
 食事って命をつなぐ大事な行為だからね。食事に関するなんでもかんでも、余さず楽しもうじゃないですか。
 

*1:カツオとかコンブとかイリコとかトマトとかトンコツとか