Winny開発、Winny使用 なにが間違いかを読んで

 


Winny問題では、さまざまな議論があるのだけど、著作権幇助やWinnyの使用に関していうと、間違いは次のどちらかだと思う。

1.開発者を著作権幇助の罪で逮捕したこと
2.Winny使用者を取り締まらないこと

 
 1. はねえだろ。
 著作権法に抵触しているのは Winny ユーザ。放流者は明らかに違反しているが、それを再うpしている中継者もアウトであると考えることができる。
 となると、その状況を防ぎうる立場にありながらそうしなかった、ということが幇助に問われても仕方がない、ということだ。
 
 管理できる立場にありながら管理を行わなかったことが罪に問われた例としてこういうものがある。「奥村弁護士の見解」より、アイコラ画像の投稿を黙認したことを名誉毀損とした事例(東京地裁H18.4.21)
 名古屋ではこんな事例もある。同じく奥村先生のところから掲示板管理者の刑事責任@名古屋地裁
 管理できないように構築された Winny ネットワークにおいて、その仕様を変更できる(つまり管理しうる)立場である 47氏著作権侵害の防止策を怠った(掲示板から違法画像を削除しなかった、に相当)ことを罪とする、なんてのは充分妥当な考え方でしかない。むしろ、共同正犯ではなく幇助としたところはまだありがたいほうだ。積極的に罪を犯したのではなく、サボったから巻き込まれたという体裁だから、実際にはよく言われるように「ソフトウェアの開発が罪」というわけではない。
 だから俺は昨日あたりで「Winny ユーザが悪い」とメモしたわけだ。
 
 ということで、「1. 開発者を著作権侵害の幇助で逮捕したこと」は、妥当なラインだ。違法コンテンツが流通する場となった場合に管理者が幇助とされるという実績があることがその理由。
 個人的にはソフトウェアの実装が未完成だったことで犯罪幇助とか言われるのはあまりにもウザいので無罪放免されていただきたいところだが。
 
 で、2. のほうが問題だ。
 幇助と言う限り、主犯っつうか正犯がどっかにいるはずだ。それは実体としては Winny ネットワークのノードを管理している者、要するに Winny ユーザであるはずだ。
 Winny は構造上、キャッシュがそのまま再放流される。無修正画像や動画は日本国内では放流しちゃマズかったはずだ(うろ覚え)し、児童ポルノに至っては自動的に犯罪になる。コンテンツの一部であっても同じだろう。暗号化しているから大丈夫なんてのは言い訳に過ぎない。しかるべき方法で復号すれば原本が取り出せる場合、それは単にメディアを変換しているのと同義だ。
 となると、中継者が放流者を兼ねる Winny ネットワークでは、積極的に違法コンテンツを削除しない限りは犯罪となりうる、と言う事ができる。これは掲示板管理者とコンテンツの関係により近く、自分が管理している Winny が何を放流しているのかを管理できる状況にあるのであれば、管理すべきであるというのがその理由として挙げられる。
 Winny は「なんでもダウンロードできるデータ乞食の夢のツール」ではなく、ファイルサーバってことになる。
 
 だから、Winny ユーザはいつ捕まってもおかしくない状況にある。ダウソ厨、それも DOM だけが逮捕を免れるだろう。UP0 パッチを適用していたり、キャッシュを積極的に削除していたりする者だけが Winny を利用できる、という状況になってしまっている。しかし、それは Winny ネットワークの崩壊を意味するだろう。それでも、Winny ネットワークが汚染されてしまったために積極的に汚染を避けようとしなければ犯罪行為に巻き込まれてしまう、というわけだ。
 ということで、本来なら Winny ユーザはガンガン逮捕されてもおかしくない状況にある。
 
 じゃあ、なんで逮捕されないのか?
 
 
 全ての速度違反が捕まっている訳じゃないってのと同じ理由だろう。
 
 
 つことで、

Winny開発を悪とするなら、Winny自体が悪。だったら使用を取り締まるべきで、「Winnyつこうた」人たちは取り締まるべき。
 というのは明らかな間違い。Winny そのものや Winny ネットワークは悪くない。ただ、使い方が悪いだけだ。だから本来は Winny ユーザがガンガン吊し上げられるべきなんだが、それは「Winny を使ったから」ではなく、「Winny でワルイコトしたから」という理由である。
 
 善良な Winny ユーザを捕まえてはいけない。
 
 
 では、何故パッチをリリースできないのか。それは証拠の改変になるからだと考えれば辻褄が合う。「Winny に管理機能を実装しなかったために Winny ネットワーク上で違法なデータが流通している」という状況そのものが証拠となっているため、状況を被告が変化させられるようにはできない、ということだろう。
 なら、被告以外が変化させればいい。つまり、「Winny に管理機能がなくても自浄作用が働き、違法コンテンツは流通しづらい」という状況になれば、47氏は「幇助」していないことになる。事実として管理機能がなくても違法行為が減るのであれば、アプリケーションに機能を備えさせる必要がなかったことになり、当該機能を実装しなかったことを幇助として主張することができなくなる(因果関係が消滅する)。
 そうなれば 47氏は無罪放免、Winny は念書の影響で再開できなくても後継のツールは作成できるだろう。そうなれば、様々な問題は解決に近づき、ユーザもハッピーになれる。
 
 ベタな弁護団にせっせと寄付するより、違法コンテンツをキャッシュやアップフォルダから消すことがはるかに 47氏Winny の支援になるってことだ。
 それをせずに「Winny ワルクナイ」「開発者ワルクナイ」と呪文を唱えても、そこにある違法コンテンツが台無しにしてしまう。
 修正パッチが出せないのは、つまり Winny ユーザに原因がある。Winny をもはや再生できないほどに食い散らかした寄生虫は、Winny ユーザそのものだった。