先日の頭悪すぎるネタだが

 
 大量のダミーファイルでWinnyユーザーをうんざりさせるソリューション から プレスリリース を見てみた。
 プロダクトの詳細を引用しておこう。

■製品・サービス詳細
『コンテンツシェルタ』は、コンサルティングの導入部と対象の調査、そしてP2Pファイル共有ネットワーク上で流通するコンテンツファイルを駆逐するまでの一連のソリューション。最新のファイル共有ソフトにも対応する。

 ぶっちゃけダミーファイルの大量アップなわけだな。ハッシュ晒されたら終わり。or「ダウンロードしてはいけないファイル」リスト登録でも終わり。IPアドレス登録でも終わるし。
 たしか Winny のハッシュって MD5 だっけ?ハッシュを衝突させることができるようになったわけだけど。たぶん、別のハッシュと整合性をチェックするだけで充分だと思われる。複数のアルゴリズムによる保証を同時に満たせるかどうかとなるときわめて困難となるため、回避されるのは時間の問題となる。Winny にパッチを当てられるか、あるいはヘルパーアプリケーションの登場までのプロダクトでしかない。
 だけど、正常なファイルが壊れるわけではないことから、ハッシュが違う(つまり別ファイルとして認識される)ことがわかる。これはつまり違うハッシュを持つファイルを19個蔓延させることで、もとのコンテンツを拾える可能性が 5% 程度になった、ということだ。最悪、ファイルサイズと拡張子情報、せいぜいヘッダを合わせた程度でしかない可能性もある。
 なんで?というと、ハッシュ値とファイル名が一致すれば Winny 自体が真贋の判別ができなくなり、マルチダウンロード等の際にダミーファイルからのファイル断片が混入することで途中まで入手した本物が「最後まで利用できない状態」になることが容易に考えられるからだ。そのようなこと、つまり直接的に本物の流布を阻止できていないことから(できていればそっちのほうが売りになるため宣伝しないはずがない)、そのようなハッシュの衝突や部分ファイルの汚染までは起こしていないことがわかる。
 
 このように「コンテンツシェルタ」じゃ技術的にたいしたことではないだけでなく、すでにこの程度は為されている。それだけではない、BitTrrent あたりの研究成果でダミー放流には効果が薄いこともよく知られている。
 この程度のことがわからない段階でコンサルティングがまともにできないこともよくわかる。一発屋で終わる可能性があるので気をつけろ。
 
 それだけじゃない。仮にアベレージとして偽装が50%程度浸透したとしても意味は無い。八割か九割程度偽装ファイルになったら効果は多少あるかもしれないけど、それはそのままトラフィックの増大を招く。
 なぜか。ny にしろ MX にしろ基本は地引&放置だ。落としきったところで偽装かチェックして、偽物は捨てる。そういう運用が為されている。偽装が増えれば検索にヒットするファイルが増え、それだけトラフィック流量が増える。トラフィックの増大は正当なコンテンツの流通を妨げる。
 まだあるぞ。偽装ファイルが増えるということはそれだけニーズがあるということだ。ニーズがあって負担が少ないなら多少ゴミが増えてもダウソ厨は落としつづけるだろう。さらに Winny には偽装コンテンツを流すノードを排除する仕組みがあるらしく、結果として Whizzy は失敗する。
 
 まだまだある。それだけニーズがあるなら、流通しているものより品質のいい安価な正規版をリリースしたほうがコンテンツホルダが儲かる。つまり金になる。カネを払って意味の無い行動をするくらいなら儲かるほうのアプローチを取るのが当然で、このプロダクトはマーケティングにも失敗しているんじゃないかと思われる。
 
 まだあるぞ。営業マンは完全歩合制のようだが、きっと人員の入れ替わりも激しいんだろう。価格からして営業マン一人あたり一ヶ月最低10本は取れないといかん。それでワンセット16万として合計160万、二人ぶんの食い扶持になる。営業マンと実作業員、あとは経費な。
 ところが10件取ろうとしたら2日に1件くらい取れないと達成できない。これ、実現できると思う?
 
 経費の面からも不安がある。仮に一ヶ月に10件取れたとしよう。ビデオコンテンツと仮定して、どれくらいの容量だろう。VideoCD クラスの動画として、ざっくり 500MB としようか。それが10件。偽装ファイルは排除されつづけることを考えると、常にアップし続けなくてはならない。5Gの容量を160万の売上で占有する。翌月になるとこの5Gは売上を生まないままアップされ続けるだけでなく、次の 5G が新たに増える。
 さらに、毎月転送量も増大しつづけることになる。回線維持費用を捻出するためにはさらに受注しなければならない。
 
 最終的にビジネスモデルが崩壊することは目に見えている。最安値で16万ということだろうが、毎月サポートとしてカネを生めるのだろうか。本物が流れつづける以上、おそらくダウソ厨は本物を見つけ出す。本物のハッシュが晒され、偽装ノードが晒されたらそこで終わることもよくわかる。
 
 これらの理由から、ちょっとでも解ってる奴はこんなプロダクトは使わないのではないか。