ねこの素晴らしさを考える
ねこはなぜすばらしいのだろう。
ねこの瞳。一心に見つめる視線のまぶしさなど、心の底まで洗われるようだ。
ねこの耳。物音を逃さず捕らえる耳の奥、漏れの呼ぶ声が聴こえるか?
ねこの口元。ふっくらとしたマズル、しまい忘れた舌先がわずかな唇の隙間に覗く。
ねこのうしろあたま。日向の匂いをたっぷりすいこんだ後頭部をなでる至福を与えてくれる。
ねこの喉。くすぐってやればねこは至福の表情でごろごろと喉を鳴らして答えてくれる。
ねこの背。しなやかなその腰へのラインなど、そこらの美女では敵うまい。
ねこの腹。やわらかなその部分をもふることができるのは特別に許された者だけだ。
ねこのにくきう。やさしく大地を踏みしめるそのにくきうは朝布団の上でもみもみと踏みつけるのに使われる。
ねこの尾。高潔なその心を表す魅惑の器官。
ああ、そうか。
ねこを構成するその全てが余すところ無くすばらしいのだ。
ねこが毛づくろう。その仕草の愛らしさ。
ねこが獲物を狙う。その秘めた戦闘力。
ねこが甘えて身をすりよせる。その身震いするような愛おしさ。
ねこが爪を研ぐ。背を伸ばし己の武器を研ぎ澄ます姿は神々しくもある。
ねこがあくびをする。つられてあくびをしてしまう。あぁ幸せの瞬間。
ねこが眠る。まるくなって眠り膝の上で愛撫をねだる。夢の中に遊ぶその寝顔は見る者を癒す。
ねこが走る。ととんと軽やかに駆け回る。おお、まさに生命の迸る様ではないか。
ねこが跳ぶ。しなやかに跳ぶ。天駈ける肉食の獣よ。野生を忘れてはいないのだな。
ねこが尻尾を振る。ああ、ああ、それは私を誘う魔性の鞭か。
ああ、そうか。
ねこが行うその全てが余すところ無く愛おしいのだ。
斯様にねこはすばらしくいとおしいのは至極当然の事である。